あなたのギャップにやられています

「待てよ」

「やめて! 離して! 変態!」


走り出したもののすぐに腕をつかまれてしまった私は、とにかく大声を出して暴れる。

百合ちゃん、助けて。
心の中で叫んだけれど、変な男にナンパされた時みたいに、百合ちゃんが通りかかることなんて絶対にないし。

ここで襲われて、山に捨てられて、私はそうやって最期を迎えるのよ……。
一旦は絶望的な気分におちいったけれど、まだ諦めるのは早い。


「うわわわわー!」


これが"火事場のクソ力"ってやつなのかもしれない。
思いっきり手をブンブン振り回すと、男の手が離れた。

今しかない。
そう思って走り出した瞬間……。

「イタッ」

あぁ、どうしてだろう。こんな時に転ぶなんて。


「落ち着け、冴子」

「落ち着けるわけないでしょ! えっ!?」


今、私の名前を呼ばなかった?


「冴子、俺だし」

「俺?」


やっとのことで顔を上げると、そこにはずっと会いたかったあの人が。

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