Chain~この想いは誰かに繋がっている~
なっ!っていう表情を、私に向けた小宮山さんは、泣きそうな顔をした私にハッとしたのかもしれない。


「美波。早くレジに行って来いよ。」

「うん……剛は行かないの?」

「俺、もう少しここで見てる。」

「わかったわ。」


小宮山さんから会員証を渡されて、レジに行った彼女さん。

棚の角を曲がる時に、私をチラッと見て行った。

しばらくの沈黙の後、口を開いたのは、小宮山さんの方だった。


「…あのさ。泣かないでくれる?」

小宮山さんの言葉に、ズキッと胸が痛んだ。

「いえ、泣いてないですよ。」

「そう?だったら安心した。俺、女の子に泣かれるの、苦手なんだよね。」

下を向きながら、並んで立つ二人。

傍目には、どんなふうに映ってるんだろう。


「彼女さんは、泣いたりしないんですか?」

「ん?うん……俺、あいつが泣いているのって、一度しか見たことないし。」


“あいつ”

その距離感が、私の胸を余計に、締め付けた。
< 51 / 125 >

この作品をシェア

pagetop