Be yourself!
「どうしたんですか?」
「実はね……ちょっと困ったことが」
「困ったこと?」
「うん。あのさ……」
「お疲れ様です!」
何かを言いかけた御子柴さんの声にかぶせた誰かの声に、テントの中の空気が一変する。
「あの、俺たちの曲聴いてもらえませんか?」
「ぜひ感想聞かせてもらいたいです!」
それからは怒涛のように、いっせいに人が押し寄せ取り囲まれてしまった御子柴さん。
「え、ちょっと?」
ぴょんぴょんと跳ねながら輪の中心を覗き込もうとするけれど、なかなか前に進めない。
御子柴さん人気者過ぎだ!
気安く見えるけれど、御子柴律という人の吸引力を忘れてたかも。