Be yourself!
「最初からそうだったじゃん……俺は歌うなんていやだって言ったのに……」
応えたのは真生だ。ソファーにもたれて、ため息をついている。
というか、さっきから見ていて思ったのだけど、真生はボーカルのくせしてセットリストにそれほど口を突っ込まない。
主に小次郎さんが提案し、多聞さんが意見を差し挟み、銀二さんがボケる、の繰り返しに見える。
真生はそんな様子を基本的にボーッと眺めているだけだ。
ボーカルのくせに、あんなにやる気がなくて大丈夫なんだろうか……。
「そんな昔のこと引っ張り出すなって、マキ! 学園祭は学園祭で楽しかっただろ?」
「――じゃあ目当ての子がいないって誓えるか?」
「う……でも、ちょーかわいいんだぞ……バラードのときさ、ピックじゃなくて指で弾くのがかっこいいって言ってくれるんだぞ……」