たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 だんだんと怒りから呆れに変化した。支樹がとって食いそうな目で見ていることに反応して体を震わせた。

「どうした?何怯えているの?」

 息を吸ってなんとか声を出そうと試みたけれど、うまくいかなかった。

「その表情も俺以外の奴に見せるなよ。もし、見せたら・・・・・・」

 どんな表情をしているのかとか知らないよ。今はそれどころじゃないのだから。肝心なところで止めないでほしい。

「汗かいているよ」

 私の額に大きな手が触れた。

「誤魔化さないで」
「そろそろ家に帰ろうか」
「自分の家じゃないでしょ」
「いいだろう、何でも」

 やっぱりこの人はむかつく。掴もうとしても掴みきれない雲みたい。

「もう少しここにいたかった?人の気配まったくないね、この場所。好きなことをできる」

 ここを教えるべきではなかった。
 後悔していると髪に感触があった。この人、人が大人しくしているからって、私の髪を手にとってにおいを嗅いでいる。後ろに下がろうとすると、後頭部を掴まれて吸い込む音が聞こえた。
 こっちが必死に抵抗している姿を楽しんでいるのだと理解し、それなら逆のことをしようと一気に力を抜いてみたが、変わらない。
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