Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

「ブラッドスネーク?」

聞いたことがない。
ジルにはピンとこなかった。

「あぁ。代々盗賊の家系のスネーク家が作った盗賊団って話だ」

「それって、あの財宝や秘宝を次々に発見して有名になったって盗賊団の話?」

ふいに店主が口を挟んだ。
何かを思い出したのだろう。

「そうだ。彼らは危険と恐れられた場所へ赴いては、伝説となっていた財宝なんかを手にしていった。
歴史学や考古学に影響する大発見も少なくはなかった。
野蛮性はなく、ただこの世界に隠された真実を解き明かす。
それが彼らの楽しみで、そんな冒険に魅せられた盗賊だった」

そこまで話して、ザックは水で唇を湿らせた。


所謂、トレジャーハンターってやつね。

だけれども、野蛮性のなかった盗賊団が、人を襲うようになったのだろうか?
冒険に魅せられた者たちが、そんなことをするだろうか?

盗賊団の方針の変化とはいったい何なのだろう?

いろいろな疑問がジルの頭の中を駆け巡る。


「でも、ザック…」

店主が遠慮気味に口を開き、ジルの思考は一旦遮られた。

「それって、大昔の話じゃない?
私はうんと小さい頃に聞いたように思うけど。それも、昔話として」

「あぁ。僕が今言ったことは昔話だ。もう何百年も前の話だよ。
彼ら一族は滅び、伝説だけが残った…」

そこでザックは、ふぅっと深く息をついた。

< 61 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop