Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「ブラッドスネーク?」
聞いたことがない。
ジルにはピンとこなかった。
「あぁ。代々盗賊の家系のスネーク家が作った盗賊団って話だ」
「それって、あの財宝や秘宝を次々に発見して有名になったって盗賊団の話?」
ふいに店主が口を挟んだ。
何かを思い出したのだろう。
「そうだ。彼らは危険と恐れられた場所へ赴いては、伝説となっていた財宝なんかを手にしていった。
歴史学や考古学に影響する大発見も少なくはなかった。
野蛮性はなく、ただこの世界に隠された真実を解き明かす。
それが彼らの楽しみで、そんな冒険に魅せられた盗賊だった」
そこまで話して、ザックは水で唇を湿らせた。
所謂、トレジャーハンターってやつね。
だけれども、野蛮性のなかった盗賊団が、人を襲うようになったのだろうか?
冒険に魅せられた者たちが、そんなことをするだろうか?
盗賊団の方針の変化とはいったい何なのだろう?
いろいろな疑問がジルの頭の中を駆け巡る。
「でも、ザック…」
店主が遠慮気味に口を開き、ジルの思考は一旦遮られた。
「それって、大昔の話じゃない?
私はうんと小さい頃に聞いたように思うけど。それも、昔話として」
「あぁ。僕が今言ったことは昔話だ。もう何百年も前の話だよ。
彼ら一族は滅び、伝説だけが残った…」
そこでザックは、ふぅっと深く息をついた。