キズだらけのぼくらは
人間はいつだってひとりなんだ。
味方なんてどこにもいない。みんな、自分の身を守るだけで精いっぱいなの。
私だって、彼女の敵の傍観者。
私の視線だって、彼女を襲う凶器であることに変わりない……。
結愛はひとり、今にも泣きそうな顔でアキにすがるような瞳を向けている。
そこに救いはなく、裏切りしかないというのに。
「なに、その目。親友親友ってほざいてるくせに、そんなお願いもきけないの? ホントに役立たず。泥棒ネコ! 私の前から退いて!」
狂った女の金切り声がとどろく。
凍りついていた教室の空気が、まさにバリンと音をたてて、崩れた。
本当に冗談ではなく、大きな音をたてて崩壊した気がしたんだ。
傍観者はいまだにかたまったままだったけれど、秋穂は教室を闊歩しマスコットをゴミ箱に投げ捨て教室を飛び出していった。
取り巻きの女子たちも、ワンテンポ遅れて秋穂を追いかけだす。
そんな彼女たちにぶつかられるたびに結愛は痛みに耐え、しまいには崩れかけ、あの秋穂の机の脚にもたれていた。