幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
「へぇ、この子が礼太くん」
運転席から興味深げにのぞきこんでくる人物に、礼太はどう反応していいか分からず黙りこくった。
若い男の人だ。
多分、二十歳を少し過ぎたぐらい。
茶髪をワックスで遊ばせている。
黒目がちな瞳には濁りがなかった。
「そ、うちらの兄貴で、本家の次期当主よ。今はなんちゃって修行中」
華澄のなんちゃって修業という言葉に、その人がぷっとふきだす。
礼太はいたたまれずに赤面した。
「兄貴、この人は奥乃 裕司兄さん。わたしたちのはとこよ。」
はあ、と言ったきりもじもじとするばかりの礼太に、華澄はしびれをきらしたらしく、半ば強引に車の中に引き込まれた。
「詳しい話は朝川中学校に行きながらでいいでしょ」
聞いてない、と目で訴える礼太に華澄は肩をすくめた。
「兄さん、おかえり」
後部座席に座っていた聖のいつもと変わらない優しい笑みにふと力が抜けた。
運転席から興味深げにのぞきこんでくる人物に、礼太はどう反応していいか分からず黙りこくった。
若い男の人だ。
多分、二十歳を少し過ぎたぐらい。
茶髪をワックスで遊ばせている。
黒目がちな瞳には濁りがなかった。
「そ、うちらの兄貴で、本家の次期当主よ。今はなんちゃって修行中」
華澄のなんちゃって修業という言葉に、その人がぷっとふきだす。
礼太はいたたまれずに赤面した。
「兄貴、この人は奥乃 裕司兄さん。わたしたちのはとこよ。」
はあ、と言ったきりもじもじとするばかりの礼太に、華澄はしびれをきらしたらしく、半ば強引に車の中に引き込まれた。
「詳しい話は朝川中学校に行きながらでいいでしょ」
聞いてない、と目で訴える礼太に華澄は肩をすくめた。
「兄さん、おかえり」
後部座席に座っていた聖のいつもと変わらない優しい笑みにふと力が抜けた。