優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
階段から落ちた夢を見た時のように身体を引きつらせて目覚めた桃は、大量の汗をかいていた。


撫子が生贄となることを決心して庄屋の屋敷に向かうところまではわかったが――肝心なのは、その先。

この事態を止めることができないのだから、せめて前世の謙信とどうやって出会ってどんな言葉を交わしたのか…それを知りたい。


「うなされていたよ。大丈夫?」


「謙信さん…うん…村に近付いてるせいか、あの夢を見たの。私の前世の名前…撫子っていう名前みたい。へへ、可愛いよね」


「やっぱり私たちを待っているようだね。だけどおかしいなあ、私は見てないんだけど」


「そうなの?なんでだろ…」


頬杖を突いた謙信は、桃の額に張り付いた髪を払ってやりながら少し舌を出しておどける。


「寝ずに桃の寝顔をずっと見てたからかな」


「え!?も、もう!ちゃんと寝て!あんなにお酒飲んだんだからほんとに身体壊しちゃうよ」


「ふふ、はいはい。じゃあもう寝ようか。またうなされてたら起こしてあげるから」


睡眠の浅い謙信は、睡眠時間も短い。

いつも先に起きているので寝顔を拝めることはあまりないが、一緒に寝る時はいつも腕枕をして寝てくれる。


三成は恥ずかしがってなかなか腕枕をしてくれないので、謙信の胸に頬を寄せて抱き着いた桃は思いきり甘えて瞳を閉じた。


「ねえ桃。そろそろ子ができてもいい頃だと思わない?」


「へっ?うん…でも先月もちゃんと生理きたし…まだみたい。…謙信さんは私が三成さんの赤ちゃん産んでも平気なの?」


「私たちは桃の意志を尊重すると決めているからその点は大丈夫だよ。何度も言っているけど、三成の子であればいじめて遊ぶからね」


「謙信さんも三成さんもいいパパになりそう」


「ぱぱ?」


喋っているうちにうとうとしてしまってまたすぐ爆睡した桃の心地いい体温に欠伸をした謙信が瞳を閉じる。


そして夢の世界へ誘われた。
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