ハートフル・アーツ
「ずっと、後悔してた…


あの時、俺を守ってくれた明日香を守れなかった…


そして、怖かった…

あんなことがあった後じゃ、明日香も俺の傍からいなくなるんじゃないかと…」

朝倉が言う



「私も怖かった…

士郎が私のために暴れて…士郎が士郎じゃなくなるんじゃないかって…」


「俺のせいで酷いイジメにあったことは恨んでないのか?」


「そりゃ…辛かったわよ。

でも、士郎を救えるなら良いって思ってたから…」


「お人好しめ…」


「…士郎は私が傷つくと、士郎も傷ついて、暴れて…士郎じゃなくなる。

だから私は士郎も守れて自分も傷つかないように強くなるために…

リーダーの居る今のチームに入ったんだ…。」

明日香が言う


「チーム名は確か、リバータス…だったか…?」


「うん。

自由って意味なんだってさ。

私はバカだからどこの国の言葉かわからないし、リーダーも昔、何かで聞いたって言ううろ覚えの話で…何語かはわからないんだって。」

明日香が言う


「メンバーはどのくらい居るんだ?」


「今はもう…リーダーと私だけ。」


「新しいメンバーは募集してるのか?」


「随時受付中。」


「弱くても入れるのか?」

「むしろ弱いのは大歓迎。」


「バイクの免許が無いんだが…」

「暴走族が無免許なのは珍しくないって。」

「バイクに乗ったこともないし、当然持ってない。

原付も無い。」


「練習すればすぐに乗れるようになるし、士郎は弱いんだから私の後ろに乗せて守ってあげるわよ。」

「そうか…」

「そうよ…」



沈みゆく夕陽を二人は屋上で手を握りながら静かに見つめ続けた
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