ハートフル・アーツ
「おやめなさい!!」

あやねが幸大を声だけで制止させた


「あなたが拳を握ってくれるのはとても嬉しいです。


ですが…あなたの拳は彼のような人を殴るために使わなくていいんです。


あとは私たちが…」


そう言いながらあやねはあかねから離れて幸大に向き直る


その横に才蔵も並ぶ


「今回は大変な迷惑をお掛けしました。」

才蔵が幸大に頭を下げる


「あなたは娘のために拳を握り、妹のためにも拳を握り…本当に素晴らしい方で…

ありがとうございます。」

あやねも幸大に頭を下げる



「妹の…?」

幸大が言う


「はい。

半造の妻は私の妹です。」

あやねが言う


「小鷹君、君には感謝している。


あかねの友達になってくれたこと…


私の代わりに助けてくれたこと…


本当にありがとう。」


「と、とりあえず頭を上げてください!」

幸大が言う



「…。

半造を連れていけ。」

「はっ!!」



忍者たちが消える



「この御礼は後日、改めてお伺い致します。」

「いや、そんな…」


幸大が言う


「今は少し急ぐ案件がございますので…今日はこれで。」


才蔵が言う


「あかね…せっかくだから今日はこのまま泊めていただいて、明日、帰ってきなさい。」


「でも…」


「彼への拷問をあなたに見せるわけにはいかないくらい残虐だから…ね?」

あやねは笑顔で言うが目は笑っていなかった



「ちなみに…あなた方の中で『奈落天上』という言葉に聞き覚えは?」

才蔵が言う


が…誰も知らないようだった



「そうですか。

変な質問をしてすみませんでした。

忘れてください。




では…失礼します。」


才蔵とあやねが消えた




夜の闇は静かに…深くなっていく


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