Sweet Heart
 


「ちょっ、ちょっと!あんた何キロで走ってるのよ!」


「知らねー!」



間違いなく規定の速度以上で走っている榎本喜一に私は顔を真っ青にしながら耳元で叫ぶ


しかしそんなこともお構いなしなのか榎本喜一はケラケラ笑いながら更に速度を上げた



こっ、こんなところ警察に見られたら間違いなく捕まるわよ!



危ない運転で次々と車を追い越す榎本喜一


私はただ警察に見つからないことと命が無事にあることを願った



そんなこんなでバイクを走らせること数分、榎本喜一はある人気のない倉庫の前で止まった




「えっ?何、ここ?」


「俺の城だ!」



当然この場所が何なのかわからない私は榎本喜一に質問すると

榎本喜一は得意気にニカッと八重歯を見せて笑う 



俺の城って…ますます意味わかんないわよ…



なんて思っていると…



「兄貴ー!お待ちしておりましたー!」


「よぅ、幸兎(ユキト)!待たせたな!」



倉庫の中から黒髪に赤メッシュが特徴の背の低い男の子が出てきた



「もうみんな揃ってますぜ!早く走りに行きましょう!」


「そうだな!じゃあ、全員集めろ!」



幸兎と呼ばれた男の子は「はい!」と明るく返事をして、再び倉庫の中へと戻る


そして…



━ブルルン!ブルルン! 



《総長!参りましょう!》


「おぅ!」



倉庫の中から何十台とあるバイクと、これまた榎本喜一と同じ特攻服を着た柄の悪い男達が現れた 


……榎本喜一を"総長"と呼んで…





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