Sweet Heart
 


「また明日~!」


「ばいばーい!」



文化祭の準備も途中だけど下校時間になったため生徒達は帰宅する


家の方向が違うため、校門の前で亜沙美や武蔵、流唯と別れた



文化祭の準備が始まる前は私の部活動の日以外、ほとんど一緒に葵君と家まで帰っていた


だけど葵君は文化祭の準備には参加せず、今ではこうやって1人で帰っている…



「ずっと葵君と気まずいままなのかな…」



今にも消えてしまいそうなくらい小さな声で呟いて、溜め息を漏らしてしまう




せっかく仲良くなり始めたのに…葵君と気まずいままなのは嫌だ


そのためにも亜沙美の言うとおり、私の気持ちを知ってもらわないといけない!……けど



きっと葵君はまた関わるな、って怒るんだろうな…




そんなことを考えながら歩いていると、マンションの前にたどり着いてしまった



私は入り口でオートロックを解除し、エレベーターに乗って、最上階のボタンを押す



「はぁ…。葵君と会うの緊張するな…」




━チーン



エレベーターが最上階に着き、重い足取りで降りると部屋の前に立って鍵を開けた



すると



━パンッ!



「喜一は本当に何もわかってない!」



リビングから人の肌を平手打ちしたような渇いた音と、蘭さんの涙混じりの荒々しい声が聞こえてきた



「蘭さん、きぃ兄ちゃん!」



ただならぬ状況を感じた私は慌ててリビングへと向かう



そこには頬を叩かれたまま顔をあげないきぃ兄ちゃんと、そんなきぃ兄ちゃんを涙目で睨みつける蘭さんがいた




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