Sweet Heart
リビングには蘭さんときぃ兄ちゃんしかいない…
今まで会えば口喧嘩は絶えなかった2人だけど、今回のはいつもの口喧嘩とは違う…
一体何があったの?
「喜一は何もわかってない…。私が喜一に別れを告げられた時の気持ち…どんなに苦しかったかわかるの!?」
蘭さんの声はリビング中に響き渡るくらい大きくて、その声の大きさが蘭さんが感じてきた苦しさを物語る
だけどきぃ兄ちゃんは蘭さんを見ようとせず、黙ったまま…
「もう二度と私の目の前に現れるな!」
そして蘭さんは最後にそう言うと、私の横を通り過ぎて出て行ってしまった
「きぃ兄ちゃん…何で何も言わないの?」
「…真智」
「今ならまだ間に合う!蘭さんを追いかけて、ちゃんと話そうよ!」
きぃ兄ちゃんの瞳は悲しみの色に染まっていて、とてもじゃないけど平気だとは思えなかった
私はきぃ兄ちゃんに後悔してほしくなくて、蘭さんを追いかけるように言う
しかし、きぃ兄ちゃんは目を伏せて動こうとしない
「きぃ兄ちゃんが追いかけないなら私が蘭さんを追いかけて呼んでくる!」
何もしないきぃ兄ちゃんに痺れを切らした私は、きぃ兄ちゃんの代わりに蘭さんを追いかけようとした……が
「やめとけ。関係ない人間は関わらない方が良い」
「…葵君」
リビングのドアで葵君が私の行く手を止めた