Sweet Heart
必死に追いつこうと頑張る私。
その時、葵君がふと立ち止まった。
「悪ぃ。早すぎた。」
葵君は私の方を振り向き、私が来るのを待ってくれた。
気づいてくれたんだ…。
「私の方こそ歩くの遅くてごめんね!」
「良いよ、謝らなくて。じゃあ、行くか。」
ようやく私が葵君に追いつき、今度はちゃんと葵君の隣で歩く。
私を歩道側に歩かせたり、歩幅に合わせてくれる葵君のさりげない優しさ。
私は何だかそれだけで嬉しくなり、笑みがこぼれそうになった。
「ここだな。」
歩いて約10分位でスーパーに到着し、かごをカートに乗せて入る。
「俺、こういう所に来るの初めて。」
「えっ!嘘!?」
「材料とか欲しい物は全部取り寄せたり、特注させたりしてたから。」
買い物に行ったことないって言ってたのには驚いたけど、
葵君の家って金持ちなんだっけ?
そんな金持ちの葵君が庶民的な所は珍しいんだろうな。
「でもスーパーで買い物するのも良いんだよ!
そりゃ、取り寄せしたものより新鮮さはないかもしれないけど…
安く買って美味しい料理を作るのって楽しいんだ!」
私は少しでも庶民的なものに慣れてもらうため、葵君にアピールした。