Sweet Heart
目の前に映る体育館の天井を見て、呆然と考えていた。
…今何が起こったんだ?
俺…あの五十嵐とかいう男に倒されたのか?
先手必勝!が俺のモットーであり、合図とともに攻撃にかかった…。
しかし俺が五十嵐の襟袖を掴む前に、五十嵐の手が俺の襟袖を掴んでいて
気がつけば足が宙に浮き、一瞬にして投げ飛ばされた…。
そして今に至る…ってわけか。
「武蔵、いつまでそうやってるつもり?」
「流唯…。」
「負けたんだから早く立ち上がって挨拶しなよ。」
俺がいつまでも倒れていることに気づいた流唯は、上から顔を覗き込ませて俺を見た。
流唯の言った"負けた"という言葉が俺の胸に深く突き刺さる…。
「凄い背負い投げだったね、葵。真智達も見ていたのか驚いた顔してる。」
「…別に、これくらいどうってことねぇよ。」
まるで勝つことが当たり前かのように話す五十嵐…。
何だよ…俺に勝つことがそんなに簡単なことかよ。
くっそぉ…俺を見下しやがって!
「もう一本勝負だぁあ!」
俺は素早く立ち上がると、勢い良く五十嵐に向かって走った。
━バンッ!