Sweet Heart
 


目の前に映る体育館の天井を見て、呆然と考えていた。



…今何が起こったんだ?


俺…あの五十嵐とかいう男に倒されたのか?



先手必勝!が俺のモットーであり、合図とともに攻撃にかかった…。


しかし俺が五十嵐の襟袖を掴む前に、五十嵐の手が俺の襟袖を掴んでいて


気がつけば足が宙に浮き、一瞬にして投げ飛ばされた…。



そして今に至る…ってわけか。



「武蔵、いつまでそうやってるつもり?」


「流唯…。」


「負けたんだから早く立ち上がって挨拶しなよ。」



俺がいつまでも倒れていることに気づいた流唯は、上から顔を覗き込ませて俺を見た。



流唯の言った"負けた"という言葉が俺の胸に深く突き刺さる…。



「凄い背負い投げだったね、葵。真智達も見ていたのか驚いた顔してる。」


「…別に、これくらいどうってことねぇよ。」



まるで勝つことが当たり前かのように話す五十嵐…。



何だよ…俺に勝つことがそんなに簡単なことかよ。


くっそぉ…俺を見下しやがって!




「もう一本勝負だぁあ!」



俺は素早く立ち上がると、勢い良く五十嵐に向かって走った。





━バンッ!















< 81 / 179 >

この作品をシェア

pagetop