Sweet Heart
再び何かが地面に叩きつけるような音が響く━…。
遠くから真智の声が聞こえる…。
「葵君!大丈夫!?」
真智は俺ではなく、あいつの元へ走り寄った。
そう、俺が背負い投げで投げ飛ばした五十嵐に…。
「…大丈夫。てか、わざわざ来てんじゃねぇよ。」
「だっていきなり投げ飛ばされたんだもん!心配するに決まってるよ!」
ゆっくりと体を起こし平然とする五十嵐に対し、今にも泣きそうな顔で見つめる真智。
そんな2人を俺はただ黙って見ることしかできなかった。
「何考えてんのよ武蔵!」
「不意に襲いかかるなんて武蔵らしくないね。」
「………。」
俺の突然な行動に亜沙美は怒り、流唯は冷静に呆れている。
俺はスポーツマンとして…いや、男として最低なことをした…。
「……五十嵐。わっ、悪かった。」
俺は意を決して五十嵐に謝ると、五十嵐は振り返って口を開いた。
「これで…満足したか?」
「━…!」
「おい!何を勝手なことをしてるんだー!」
先生の怒鳴り声が俺と五十嵐の間にあった気まずい空気を断ち切り
五十嵐は俺から顔を逸らし、壁にもたれて座った。
「真智、戻るよ。」
「…うん。」
そして真智と亜沙美が立ち去り、俺は独り拳を震わせながら立ち尽くす…。