不器用上司のアメとムチ
「本当は……まだ、好きなのに……」
京介さんにすがったのは、久我さんにまた拒まれることが怖かったからだ。
その結果、あたしは京介さんの手のひらの上で踊らされ、そしてゴミみたいに捨てられた……
副社長秘書という立場を“逃げ”の手段にしようとしたあたしへの、天罰なのかもしれないね……
あたしはじぶんをあざ笑うように息を漏らし、人知れず浮かんだ涙を押し付けるように、目の前のベッドの、久我さんにかけられた清潔な布団に顔を埋めた。
「起きてよ……久我さん」
震える声で、頼み込むように呟く。
「あたしのこと抱いて後悔してないって言いましたよね……あれは、どういう意味なの……?」
こんなことになるなら、あの時ちゃんと話の続きを聞いておくんだった。
久我さんが何を考えているのか、知ろうとすればよかった……
「教えて、よぉ……」
真っ白な布団のカバーに、あたしの涙がどんどん染みこんでいく。
声を殺そうとしても、自分じゃコントロールできないくらいに大きな泣き声が出てしまう。
そのままひっく、ひっくと肩を震わせながら、しばらく布団を握りしめていると……
突然、ふわり、頭の上に、あたたかいものが触れた。
そして……
「――お前のことが好きだって意味に、決まってるだろ」
その低く、かすれた愛しい人の声が……
悲しみに暮れるあたしを、優しく包み込んだ。