不器用上司のアメとムチ
「小梅、頼みがある」
「なんです、か……?」
「……本来なら俺からお前にしてやるべきなんだと思うが、体が思うように動かせなくてな……立って、顔を近づけてくれ」
久我さんが何をしようとしてるか理解したあたしは、一瞬にして頬が熱くなるのを感じた。
だけど、せっかく想いが通じあったんだもん……照れてたら、もったいないよね。
あたしはおずおずと久我さんの枕の脇に手をついて、顔を近づけた。
すると、怪我をしてると思えない強引さで後頭部をつかまれ、ぶつかるように唇が合わさった。
「――――ん、ふぁ!」
こんな場所だし、久我さんは怪我人だし、あたしの想像してたのは軽めのキスだったのに……
「…や……ここ、病院……っ」
容赦無く入り込んでくる舌が、あたしの口内を隅々まで愛撫して、甘いため息を強要する。
さっきまでオレンジに染まっていた病室は段々と闇に侵食されてきていて、このままじゃなんだかイケナイ気持ちになってしまいそうだ……