不器用上司のアメとムチ
それは久我さんの方も同じだったらしく、包帯の巻かれた手と今まで布団に隠れていた無傷の手が、あたしの胸元に伸びてきた。
「それは……ダメです……っ」
さすがに病室で、これ以上は……
あたしは、すんでの所で彼の手を掴んでその動きを止めた。
「……なんでだよ」
「なんでって……び、病院の迷惑になっちゃうし、第一佐々木と森永さんが廊下に居るんですよ!?」
「万が一お前の声が聞こえたって、アイツらなら空気読むだろ」
「そういう問題じゃ―――」
そう久我さんに反論しようとしたときだった。
急に部屋が明るくなったので、あたしたちはぱっと身体を離した。
「はいはい、そこまでで止めにしてねー!」
パンパン、と手を叩きながら入ってきたのは佐々木だ。その後ろには森永さん。
二人とも呆れたように苦笑してるけど、もしかして聞かれてた……?
「久我さん……あばらボキボキのくせに、何やってんすか……絶対安静って言われてるでしょーが!」
「……いいだろ別に揉むくらい」
「うーわ……このオヤジ上手くいったからって開き直ってる。“あいつに告白したいから協力してくれ”って情けない声で言ってたのは誰でしたっけね」
「ばっ……それは言うなっつっただろーが!!」