不器用上司のアメとムチ
あたしは、黙っていられなくなってこんなことを言った。
「森永さんは……事情を話そうとは思わなかったんですか?私なら、ひどいことを言われた後でも、その理由を知れば納得すると思います……!!」
だって、森永さんにしてみたら、赤ちゃんの写真を見せられたりするのだってすごく苦痛だったはず……
それを知ったら、相手の人だってきっと森永さんの気持ちを理解してくれたのに……
「それは、あなたが素直でお人よしの馬鹿だからよ」
口ではそう言いながら、森永さんの瞳は優しかった。
「勘違いしないで、褒めてるのよ。……私も姫原さんのような性格なら、彼女にちゃんと謝れたのにね……」
「森永さん……」
まさか彼女に優しい言葉を掛けられる日がくるとは思っていなかったから、こんな時なのに、涙が溢れそうになる。
佐々木や小出さんと仲良くなれても、森永さんとはうまくいく兆しすらなかったから、余計に……
「私、もともと性格いい方じゃないから、美人で一生懸命なあなたが入ってきたことが気に入らなくてあんな態度……ほんと、ブスのひがみよね。
それなのにあなたときたら、今まであんなに冷たく当たってきた私を、危険を顧みずに助けたりするんだもん……負けたわ、あなたには」
「そんな!森永さん、全然ブスじゃないです!」
私が力んで言うと、三人が同時に吹き出すのが聞こえた。
……なにがおかしいの?あたしは大真面目なのに。
「今のはそこじゃねぇだろ……」
「ほんといー性格してるよ、梅チャン」