おいでよ、嘘つきさん。
アザミは立ち上がり、紙と鉛筆を持ってきました。
そして、オリーブを椅子に座らせました。

男は、苦々しい表情で見ています。
アザミは、冷静な表情で淡々と用意します。
御夫妻は、そんな様子を見つめています。

アザミが言いました。
「自分の名前と、将来の夢を書いて」

オリーブは、緊張しながらも丁寧に書いていきます。

書き終えた紙を、男と御夫妻に見せました。

【オリーブ。将来の夢は、学校の先生】

男は驚きました。
御夫妻は「綺麗な字。しかも、夢が学校の先生とはな!」と、嬉しそうにしています。
アザミは言います。
「契約書には、家事のみ、と書いています。読み書きが出来るのなら必ず契約書に載せるはずです」

これには、御夫妻も頷きました。

しかし、男はふてぶてしい態度で言いました。
「あぁ。買った時は、読み書きできなかったんだ。でも、俺が教えたんだ。年齢と一緒だ」

アザミは何も言いません。
「ここで、私が教えたなんて口が裂けても言えない!」

しかし、オリーブが言ってしまいます。
「違います。アザミが教えてくれました」

男は喜び言いました。
「まぁ、どっちにしろ四年前はできなかったんだ。今、証明された」

御夫妻は、少し残念そうです。
アザミも「もう少しだったのに」と悔しくなりました。

男は宣言しました。
「その契約書は本物だ。そして、こいつは俺のだ」

御夫妻は、完全に諦めました。
アザミは、必死で「何かあるはず!」と考えています。
男は、皮肉って言いました。
「で?こっちは証拠があった。お前はどうなんだ?」
思わぬ反撃に、アザミは緊張しました。
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