最後の血肉晩餐
「何回言ったらわかるんだよ! 家で練習しているのか?  この食材どうするんだ? 捨てんのか? ああ?」


「すみません……」


亮が怒鳴っているのを初めてみた。驚いて信吾の顔を見た。こっそりと耳元で他の人に聞こえないように教えてくれた。


「最近、イライラしてるみたいなんですよ。新人に教えるのは大変ですからね。気にしないで」


話を聞いてから亮のほうを見た。餌を見つけた鷹のように鋭く凶暴な目で振り返り、私を見た。


その瞳にビクリとした。


亮は私から目を逸らし、キッチンのほうに向き直した。


「ごめんなさい。家で、もう一度練習してきます」


「あぁ。もういい。この食材は、まかないに使う。そろそろ混み始める頃だから、飲み物の作り方や簡単な一品料理を覚えてくれ」


「はい。がんばります」


落ち込んだ顔をしていた陸だったが、もえがこっそりと遠くからファイトポーズを作って応援していた。それを見た陸は、凍りついた表情から、笑顔にだんだんと戻ってきた。
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