最後の血肉晩餐
「仕事は順調?」


「俺もいろいろありすぎて正直、疲労困憊なんだ。有給取ったところだよ」


空気に飲まれないように、トーンを上げて話した。


「……そうなんだ。偶然だね。私もゆっくりしたくて、有給取っちゃった。亮から一旦離れて、ぐっすり眠りたかったの」


「お前……まだ暴力受けてるんだな?」


「……それで別荘に行こうかと思って。前に約束しちゃじゃない? 一緒にまた行こうかって。それで電話してみたの。貴方も気晴らしに、どうかと思って」


「……」

「……嫌ならいいの」


あの一日中、何度も何度も愛し合った、あの別荘へ? いいのだろうか? いや、都合良いじゃないか。


ストーカーに見張られてるかも知れないこの部屋にいるより、自然の空気を吸ったほうがよっぽど良い。


「いいよ。約束したし。行こう。俺もぐっすり眠りたい」


「そう、良かった。必要な荷物揃えといて。車で迎えに行くわ。部屋の前まで行けばいいかな?」


部屋の前はまずい。あの女に見つかったら洒落にならないかも知れない。


「あのさ。俺、実はストーカーされて困ってるんだ。東武練馬駅のサティーの駐車場にバイクで行くよ。そこで待っていて」
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