最後の血肉晩餐
 ――まさか、まさかだけど……恵美が? ここまで追い詰められて、こ、殺してしまったのか? あの恵美が?


退けた肉を元に戻し、冷蔵庫を静かに閉めた。ワインを落としそうになったが、なんとか耐えた。


物音が鳴って気づかれたらまずい。身の危険を感じる。見なかったことにして、なんとかやり過ごさなくては……。


「顔は捨てられなかったの。やっぱり少しは情が移ってたみたいで……イケメンだしね。でも見つかるならやっぱり、壊しておけば良かったわ」


その声を聞いて振り返った。いつの間にか恵美が背後に立ち尽くしていた。気づくのが遅かった。


「お前が殺したのか? まさかな……冗談だろう? 見なかったことにするから安心しろ……な? な?」


慌ててそう言ったが、振り返った俺に恵美は容赦なく、頭に鈍器で殴りつけた。


脳味噌が揺れる衝撃を頭部に感じ、その瞬間骨の音が聞こえた。握り締めていた、ワインとグラスが手から滑り落ち、床で砕けた。


ガシャン、パリンと、ワインが割れ、辺り一面はワインの赤とグラスの破片で散りばめられた。


「うぅぅぅ……」


破片をチャリ、チャリと踏み、千鳥足になった俺に、もう一度、恵美は思いっきり鈍器を振り下ろし、その衝撃でとうとう暗闇に沈んだ。


「貴方が悪いのよ……せめて、よりを戻すと言ってくれれば」
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