腕枕で眠らせて
「…あのね。…アイツ、半年前に会社辞めたんだよ」
―――胸が、変な音をたてて大きく動いた。
ずっと綻びっぱなしだった顔が、表情を無くした。
「…えっ…楷斗…が…?」
その名前が自分の口から出てしまった事に、嫌悪と驚きを覚える。
「うん。アイツ大きい商談で立て続けに失敗しちゃってさ、居辛くなっちゃったみたいで…」
「……あの人は?どうしてるの…?」
「美織に嫌がらせしてた女?あれとは多分別れたんじゃないかな。あの女、今別の男と付き合ってるし」
この感情を、なんて呼べばいいんだろう。
嬉しいの?悲しいの?腹立たしいの?
自分でも分からない。分からない。
「…一応、元同じ部署の仲間の進退として教えておいた方がいいかと思ったんだけど…ごめん、言わない方が良かったかな…」
きっと、普通じゃない表情をしている私に向かって、愛子が心配そうに声を掛けた。
「…平気。教えてくれて、ありがとう」
微笑んで返したつもりの言葉は、自分でも驚くぐらい震えていた。