腕枕で眠らせて
「今年は新店舗の準備があるから例年程では無いけど」
そう話を続けながら、玉城さんは納品伝票にギュッと店舗印を圧した。
「毎年この時期は毎日毎日オーナーと私が休み無くお店に出てるんですよ。まあバイトの子もいるけど、それでも猫の手も借りたいくらい忙しいですから。
追加発注や納品も多いし取り寄せや予約なんかで在庫管理も複雑だし、結局私とオーナーがやるしかなくって。
それこそバイトの子が揃って帰省に入っちゃったりすると朝から晩までオーナーと二人きりとかね。
連続出勤が続いた時なんか帰るの億劫になっちゃって『もう布団持ち込んで店に泊まっちゃおうか』なんて二人で言ったりして」
あははは、と朱色の口が半月の形に笑う。
こんなに楽しそうに喋る玉城さんは初めて見た。
ヌルリと私の水が濁っていく。
ヌル、ヌル、と。
愛想を籠めて相槌を打った私の顔は笑えてるのかな?
これは仕事です。水嶋さんも玉城さんも。そんな事は分かってます。
分かるんです。
分かりすぎるから、辛いんです。
こんな事で澱んでいく自分が。
ふたりで布団を並べて眠ったあの夜が、もう透明に見られなくなってしまった事が。