そして 君は 恋に落ちた。


小さく頭を下げ、半ば駆け足に近い速さで経理部のドアまで向かう。


とにかくデスクに荷物を置いたらここから離れよう。

まだ経理部に誰もいないのを確認しながらガラス戸を開けた。


「――っ」

「……何を慌ててるんですか?」


ドアノブに掛けた手に、私より大きい手が被さる。

途端に体中に響く心臓の音。



「気のせいよ。
 早く仕事始めなさい」


気付かれないかな。
私の心臓の音を……



彼が私を見る。

私は、目を逸らさずそれを受け止めると―――…


「美和さん」


呼ばれた名に、不覚にも平静が崩れる。



「美和さん、明日なんですけど」

「松田君。下の名前で呼ばないで」


それでも。

もう、囚われてはいけない。


私も、あなたも―――…



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