そして 君は 恋に落ちた。


私の言葉に、彼は一瞬黙る。


でもそれは一瞬だけで。次の瞬間にはいつもの笑顔を私に見せた。



「失礼しました。

 春日さん、明日の夜お時間いただけますか?」


いつもの柔らかい空気。

私の意識は、彼が私を見つめる瞳。と、掴まれたままの手。


「……退かせてくれない?
 中に入れないわ」


それを気づかせないように、笑顔を貼り付ける。



「………」


ドアノブを掴む私の手から温もりが消えた。
それに寂しさを感じながら、ゆっくり足を進める。




デスクに荷物を置き時計を見ると、まだ始業時間まで一時間もあった。


松田君も何事もなかったように自分のデスクに座るとPCの電源を入れた。

それを視界に入れ立ち上がる。



息苦しく感じるのは、きっとまだ体にお酒が残ってるから。

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