そして 君は 恋に落ちた。

「なぁ、今日何時に上がる?」


領収書を数えて内容確認中、瀬川君は暇そうにカウンターに肘を立てて私に聞いてきた。

私は彼を見ずに、

「今日は定時に上がるわ」

と答えた。



……あ。間違えた。


「じゃあ、いつもの所で待ってろよ」


えっと……

カタカタ電卓を打ちながら

「了解」

と答えた私。



「じゃ、また後でな」




全部数え終えた時、すでに瀬川君の姿はなく。


さっきの会話を思い出しながら、自分の失敗に気付いた。



――今日は松田君を誘うつもりだったのに…!






その日は仕事中の女子の眼差しが冷たかった。

きっと、瀬川君からの誘いが気に入らなかったんだろう。


……変わってあげたいくらいなのに。

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