そして 君は 恋に落ちた。
「お疲れ様でした」
……はい。無視ですか。
社会人として、たとえ気に入らない相手に対しても挨拶くらい返しなさいよ、と心の中で呟きながら受付を通り過ぎた。
外に出ると、少し肌寒く感じる。
空を見上げて一息吐いた。
あー、今日も無事終わったぁ!
「春日さん、お疲れ様でした」
声に振り向くと、クリクリの瞳を細めて笑う松田君がいた。
「お疲れ様」
私が答えると、彼も空を見上げて、「もう秋ですね」と小さく言ってまた笑った。
「松田さん、駅まで一緒に行きませんか?」
後ろから女の子が小走りで走り寄ってきた。
それを見て、私は「また明日」と告げ歩き始める。
後ろからは、女の子の「春日さんと何話してたんですかー?」の質問に、彼は普通に「挨拶しただけだよ」と答えた。
私はそれを後ろで聞きながら、今日はワインにしようかなと思いを巡らせていた。
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