そして 君は 恋に落ちた。

「今日は……ざる蕎麦かよ」


私の前に座る彼を止める元気はもう無くて。
ズルズル蕎麦をすするのを眺めながら彼は小さく言った。



「松田と何かあったか?」

それは、聞こえないフリをさせていただきます。



「そういえば明後日の金曜だけど」

「飲みでしょ?
 私は行かないわよ」


昨日言ってたのを思い出す。
松田君、行くって言ってたな、確か。



他人事の様に思わないと、目の前の彼に変に思われる。

入社当初から毎週の様に一緒にいた彼に隠し通せる自信がない。



「マジで予定あるのか?」

「昨日もそう言ったでしょ」

「いや、あれは…」

言って、黙ってしまった。



「まぁいいや。
 なら、明日は――」


途中、聞き慣れた機械音が会話を遮る。

それに目を向けると、目の前の彼はわざとらしいまでの溜息を吐いた。


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