くまのまーくんのお話
『お父さんを返して~。お願いだから食べないで~』


どうやら先ほどのお魚の子どものようです。


「あ、ごめんねぇ?すぐに返すから~」


まーくんは慌てて、河原でビチビチと苦しそうに跳ねていたお父さんを手に取ると、水の中へと戻しました。


『ありがとうくまさん!』

『こ、このご恩は、一生忘れませんっ』


二匹はそうお礼を言いながら、素早くその場を離れていきました。


ふと気が付くと、まーくんの周りにはお魚が一匹も残っていませんでした。


しょんぼりしながら川を出ると、まーくんは目についた大きな石の上に腰かけました。


「お腹すいたぁ…」


そう呟きながら、泣きべそをかきはじめたその時です。


「優しい子だねぇ」


うしろからそう声がしたので振り向くと、大きな篭を背中に背負ったおばあさんが立っていました。


「あんたみたいなくまっ子もいるんだねぇ。いやー、驚いた」


そう言いながらおばあさんはよっこいせ、とまーくんの隣に腰を落としました。


そして背負っていたカゴを肩から外し、自分の体の横に置くと、中から風呂敷包みを取りだしました。
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