くまのまーくんのお話
「でも、今までは会ったことなかったねー」

「そりゃ、あんたらにはかち合わないように気をつけていたもの」

「ん?」


どうして?ときこうとしましたが、おばあさんはすぐに違うお話に変えてしまいました。


「じいちゃんはもう居ないし、一人息子も都会で所帯を持って、めったに帰って来やしないからねぇ。あたしがこの山を守らないと」

「そうなんだー」


意味は良く分からなかったけれど、まーくんはそう言いました。


おばあさんは必ず毎回おむすびを持ってきてくれました。


最初はまーくんの片手にすっぽり納まるサイズだったそれは、会う度に大きくなって行き、今では両手で支えるのもやっとなくらいの形、重さになっていました。


「まーくんは育ち盛りだからね。いっぱい食べないと」


おばあさんは笑いながらそんな風に言いました。


「あたしの家はあそこだよ」


ある日、おばあさんは、川の上流の崖の上から自分の住み処を教えてくれました。


「でも、皆がびっくりしちゃうから、まーくんは絶対に山を降りて来ちゃダメだよ」

「うん、わかった」

「そうだ。庭に柿の実が成ったから、明日持って来てあげるね」

「わーい。ありがとう!」
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