幸せの掴み方
新たな旅立ち
圭祐は、柚葉の電話の後、心の中を隙間風が通っているようだった。

仕事は、きちんと熟してはいたが、会社でも、時々、ぼんやりとしている時
があって、秘書の相場や、柚香は、心配していた。

そんな圭祐を、少しでも元気になってくれればと、相場が珍しく、
夜の接待が入ってない、金曜日、圭祐を誘った。

「偶には、飲みにでも行かないか?」

相場は、仕事中は、敬語を使うが、仕事を離れると、対等に圭祐とは話を
する。

元々、年齢も近く、意外に圭祐と相場は、性格的にも合い、仕事に関しても
お互いが、遠慮なしに、自分達の意見を言い合い、圭祐も相場を信頼している。

そのお陰もあってか、仕事はこのご時世でも、順調に利益を上げており、
本来なら、相場は、副社長か専務にでもなれる器なのだが、本人が
堅苦しいのを嫌い、自分は、今のまま、圭祐の秘書をやらせてほしいと
希望していた。

そんな相場に誘われて、圭祐は、久しぶりに飲みに出かけた。

「「「かんぱーい」」」

何故か、その場には柚香も居て、不思議には思ったが、圭祐は、別段
気にすることもなく、3人で飲み始めた。

「しかし、最近、どうしたんだ? 心、ここに有らずだぞ?」

圭祐は、柚香の前で、相場はそんな事を言い始め、正直、焦ってしまった・・・


相場とは、公私共にいろんな話をするが、柚香は、あくまでも部下の一人
だった。

それをこの場で、正直に、柚葉達の事を言うのは躊躇った。

「あぁー、まぁーな。でも、良いんだ。俺が気にしても仕方がない事だから。」

そんな風に誤魔化すことしか出来ない圭祐だった。

< 237 / 310 >

この作品をシェア

pagetop