そして少女は兵器になる
命令されるまでもないと、闇にいざなわれるように、私の足は動いていた。

白い壁と壁の間を抜け、闇に踏み込む。

闇の中は、上から照らしてくる偽日もなければ、温度もない。

部屋の中よりも固く、冷たい床の感触が……なぜか、心地いい。

なぜか。

そうそれは、私に体温があると、実感できるから。

なにもわからない、なにも求められない私が、しかしぬくもりある生物だと体感できるから。

だから、闇の冷たさが逆に、心地いいのだ。

生ある私は、ここにいる。

右に左に、壁があるかはわからない。

上に天井があるかは、わからない。

だけど正面に、縦長の、明かりが見える。

明かり?

いや違う。闇の向こうに見えるそれは、真っ白い、部屋だ。
< 20 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop