あおぞら。



わたしは実家に帰った。

母は塞ぎ込むわたしに言葉をかけてくれたけれど、耳に入ってこなかった。


そらが死んだ。


その事実だけが脳を支配していた。


そらの死んだこの世界を、呪った。


わたしに残されたのは、彼の遺品と、忘れ形見であるお腹の子ぐらいだ。


母が、そらを亡くしたわたしに言った言葉に、ひとつだけ記憶に残っているものがある。




「その子にはなんの罪もないから堕ろす必要はないわ。産むならお母さんも協力する。
でも葵が彼を亡くした辛さに堪えられないようなら、子育ては難しいと思う。
どうするかはあなたが決めなさい。どちらを選んでも、わたしはあなたを否定しない。受けとめるから。」







< 62 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop