エリートなあなたとの密約


チラリと遠慮がちに彼へと視線を移せば、ダークグレイの瞳はやっぱり優しい色をしていた。


「うん、ありがと。楽しみにしてる!
あ、あとね?来月にソフィアさんがいらした時、浅草を案内するって約束したの。
私も浅草は久しぶりだし、スカイツリーも外から見てるだけでしょう?すっごく楽しみ!」

ふふっと思い出し笑いをすれば、「母さんのガイドで疲れるぞ?」と茶化してくる。


「あ、私の方が食べ物につられて迷子になるかもね?」

「大いにありえる」

「ひどーい!」と頬を膨らませれば、くすくす楽しそうに笑うからこちらまでつられてしまう。


そんな彼と結婚する前から義母のソフィアさんは本当に良くして下さるので、俗に言う“嫁姑問題”も無縁である。


何より彼女いわく、お義父さんとご結婚された際、戦争経験者ゆえか米国を嫌悪していたご両親(修平の祖父母)からの風当たりがやや強かったのだとか。


最終的には分かり合えたものの、悲しい思いを子供のお嫁さんにはして欲しくないと言っていた。


だからこそ、ほどよい距離感を保ちながら、互いに正直で穏やかに付き合っていきたいとも。


会って間もない頃、心中を包み隠さず話して下さった彼女だから女性としても尊敬していた。


さらに仏教に改宗したほど日本をこよなく愛するソフィアさんは、すらりとした容姿も相俟って凛とした印象を受ける。


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