エリートなあなたとの密約
わざと口を尖らせて言えば、ニヤリと口角を上げてそんな私を見据える松岡さん。
「言うようになったねぇ。兄ちゃん負けちゃうー」
「ふふっ、松岡さんのお陰かもしれませんよ?」
「じゃあ、今日ガレットしちゃう?」
「喜んで」
ゆらりゆらりと湯気を立てるマグカップをそれぞれが手にし、のんびりコーヒーを味わいながら雑談。と言っても、この僅かな間に進捗状況を伝えるのが本来の目的だ。
自由人に見せているだけで彼は暇じゃない。いや、とんでもない仕事量を抱える人なのだから。
人当たりも良く、一見お気楽そうな印象を受ける松岡さん。その実は部内でもズバ抜けて賢く、“変化”をいち早く察知して静かに動いている。
性格的には落ち着いた修平とは対照的だけれど、節々で同じスタンスを感じられるから不思議なもの。これもきっと、彼らの目指すものが同じであるがゆえだろう。
そんな中、松岡さんのスマホが着信音を響かせた。デスク上にあるそれを手にした彼は、嬉しそうに画面をタッチして耳へと近づける。
「はいはーい。おっはよーん。
えー、そんなテンション低いと金髪巨乳美女に嫌われちゃうよん。――ねえ?」
私がその様子を見届けながらコーヒーを飲んでいれば、意地悪そうな笑みを浮かべる彼の口がゆっくりと相手の名を紡いだ。
真帆ちゃんの愛しい愛しい“修ちゃん”だよ、と。