エリートなあなたとの密約
「真帆ちゃんはまだまだ若いよん」
「気持ちだけは若くいますが」
今日もまた、いそいそと私の手をマッサージし始めた松岡さん。これがまたツボを的確に捉えて気持ち良いものだから、私にはもう抗う必要はない。
「お疲れだねぇ」と言って手を揉み続ける彼の方が疲れているのに、どこまでも優しい人だ。
「寄る年波には勝てぬ、ですもん」
「えー、真帆ちゃんがそんなこと言うー?」とけたけた笑うので、私もつられて吹き出してしまった。
「手はとにかくクリーム塗るんだよー」
「ふふっ、はい」
「親切もといセクハラだけどぉ」
ただまだ若いなんて思っていても、色々なところに弊害は生まれてくるらしい。その中でも、特に手は年齢が表れやすい箇所だと実感するばかり。
ちなみに以前、似たような話を修平ともしていたけれど、私の負けず嫌いぶりを上手に利用する点が松岡らしいなと笑っていた。
『20代はあっという間に過ぎるよ』と渦中に言われても、これは自身で体感しなければ分からない。
だから今振り返ってみると、早すぎ!と叫びたくなるほど私の20代は台風一過の如く過ぎて行ったと思う。
かつての激務に肌が荒れても休息や少しのケアで復活の早かった20代。そして30代に突入してみると、体力も疲れの取れにくさも感じてしまうのが事実。