エリートなあなたとの密約


そんな妻にも呆れることなく、就業時刻よりも早く出社する私が遅刻しないように、いつもの起床時間より1時間早くアラームをセットしてくれていた彼。


私とは比に値しないくらい疲れているはずなのに、どこまでも優しい人だと彼の心配りに感謝する。ハッと我に返り、こうしてはいられないと慌ててバスルームへと直行した。


白い湯気の立ち込めるバスルームの中、熱めのシャワーを浴びながらあとで簡素なメールを送ろうと決めていた。


自らの不出来さに“ごめんね”と言うよりも、”ありがとう”と伝えた方がハッピーを呼び寄せると思うから……。


こうして、ずっと修平で埋め尽くされていた出社準備中の思考も、玄関ドアを一歩出てしまえば社会人の顔つきに変わるから不思議なもの。


だが、煩わしい問題が待っていると思えば頭が痛くなるのも事実。——さてあのふたり、一体どうしたものかと。


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