エリートなあなたとの密約
あの公開告白の後といえば、いつも通りシレッとPCと向かっていた松岡さんをよそに、奥村さんは研究室にこもりっきりだった。
部内は彼らの成り行きを俄かに気にしているようだったが、常に期日と開発に追われている者たちがそればかりを気にしてもいられない。
またゴシップ好きである女性が極端に少ない部署に加え、構造課のスペースが最奥であるのも幸いし、不躾な視線もさほど送られずに済んだ。
ちなみに私が残業中に席を外した隙に奥村さんは帰宅してしまっていたため、あれから顔を合わせていないものの、それまでに何度か彼女の元へ行こうとはした。しかし、その度に松岡さんから、「やめとけ」と止められていたのだ。
もし私が気遣えば、傷口に塩を塗るだけという彼の意見は尤もで。まさに親切心もお節介になるだけだ、と諦めて山積する雑務に従事していた。
さらに研究室で一緒だった奥村さんの一期上となる後輩くんによれば、作業だけは黙々とこなしていたと聞いている。
察するに、それはきっと目一杯の強がりだろう。でも、投げ出すのは彼女のプライドが許さなかったのだと思う。