エリートなあなたとの密約
やっぱり力になりたいのが心情だけれど、今はいつも通りに接して静かに見守るのが正しいのかもしれないね……。
あれこれと思案して出社した私は、まず昨晩の残りを少しでも減らさなければとデスク上の書類格闘に奮起した。
日中になればこの嵩が増すし、イレギュラーな事態に見舞われるのが常という職場。デスクワークは、落ち着いて従事出来る間に片しておきたいものだ。
そうして出勤タイムには幾許か早い静かなオフィスで書類の決済印やメール返信まで終えたところに、社内用携帯で海外事業部から呼び出しが掛かった。
話によると、1ヶ月前に終えている案件について、クライアントからの急な問い合わせらしい。
ただ責任者の松岡さんは今日は朝から横浜支社に直行しているため、彼の部下である私と後輩くんが代理を務めることになった。
「やっぱりメイドインJapanは安全精度は高いが、こんな時に煩わしさを感じるよ」
皮肉まじりのクライアントの発言はあったものの、どうにか無事終えられてふたりで安堵した。
「ああ言われると悔しいっすね」
「そうだね。でも、新しい課題が出来たね」
「吉川さんっていつもプラス思考ですよね」
「そうかな?」
「そのガッツ、その辺の男も敵いませんよ」
「ねえ、それって褒めてくれたの?」
はぁと肩を落とす後輩くんに笑ったものの、内心では先方の仰ったことは言い得て妙だと考えていた。