エリートなあなたとの密約


SJ社は外資であっても支社個々の主張も強い企業であるから、当社の風潮は割と日本企業に近いものがある。


何より、日本製品は世界に誇れるクオリティなのに、近年はどうしてか後手に回っている感は否めない。それだけ中国などの国々が力をつけているともいえるのだろう。


海外事業部の担当者には深々とお詫びを入れられたものの、気にしないでと笑顔で部署をあとにする。そして、試作部に戻るという後輩くんとはそこで分かれた。


私といえばその足で総務部に立ち寄り、依頼していた書類を受け取ったのだが。談笑をする間もなく、今度は営業部からスマホに連絡が入った。こうして結局、午前中はそのままデスクに戻らぬまま、慌ただしく時間が過ぎていった。


ちなみに営業部の用件は、先ごろ発表会を行ったばかりの超小型内蔵の医療製品について。その製品の導入を検討中の先方から、カタログでは知りたい情報が得られないと指摘されたらしい。


そこで担当者の部下が製造部に問い合わせたところ、『試作部の方がはるかに詳しい情報を持ってるし知ってる。その前に、自社製品って認識が甘いんじゃないの』と、あしらわれてしまったようだ。


< 67 / 100 >

この作品をシェア

pagetop