エリートなあなたとの密約
まさに、営業畑の彼らもまた社内外の板挟みにあっていると感じてならない。
そんな経緯を営業部のミーティング・ルームで聞きながら、先ほど分かれたばかりの後輩くんに連絡を取った私はすぐさま該当資料をメールするよう指示した。
それから3分後には自身のタブレットPCに届いたデータを元に、補足説明と担当者の疑問をすべて答えてその件は問題なく完了。
「忙しいところ申し訳なかったね」
「いいえ、とんでもありません。お役に立てたのでしたら嬉しいです」
「お世辞抜きに、試作部は頼りになるよ」
“うちの部署も見習わんとな”と笑って言う彼に、私は首を横に振って小さく笑い返した。
「嬉しいお言葉に、さらに身が引き締まります」
本音をいえば、今もやっぱり精一杯の状況だけれど、それは誰しも同じことで。
そこで時間を追い掛け始めば、心の余裕までなくなる。何より、周囲からサポートを受けているのを忘れてはならない。どんな場面でも助け合った結果、はじめて仕事が成り立つ。
「ウチのラスト・ホープだな」
「……僭越ながら、上司はそうだと思います」