エリートなあなたとの密約
どうやら彼のほうはフォローをしたつもりのようだけど、やぶへびとなってしまったらしい。
ふわり、と微笑んでいる怜葉ちゃんの面立ちは日本人形のように凛としていて美しい。
けれど、その隣では何とも言えない表情を浮かべる高階さんが不憫になってしまう。
すると、「ときちゃん」とバリトンの耳慣れた優しい声が彼女を呼んだ。
斜め向かいの修平のほうへと視線を移した彼女に続き、私も隣のダークグレイの瞳を見つめる。
「料理の味には、作った人の人柄が現れるものなんだよ。
高階専務が伝えたかったのはそういうことだと思うよ?」
穏やかな声でなだめる修平に、ひとつ頷いた彼女。その隣で高階専務は小さく苦笑していた。
「ちなみに、真帆の料理は優しい味がするけどね」
場を取り成したかと思えば、最後にいらないひと言を告げた修平。こんな場面で、ドキドキのサプライズはいらないのに……。
そこで前方のふたりが揃って笑い始めた。嬉しさ以上に、恥ずかしさで顔が熱くなってしまう私。
「真帆さんのお料理、とても美味しいって以前から聞いてます。いつか私もご相伴に預かりたいです」
「ええと、そんなにハードル高くしないでね?
本当に家庭料理そのものだから!でも、ぜひ遊びにきてね」
「わっ、楽しみです!」
ひとりっ子で日頃は妹キャラだと言われる私だけれど、今日は姉のような立場に感じられる。
さっきの板さんの気持ちも、ほんの少しだけ分かった。怜葉ちゃんにはそれほど人を惹きつけるものがあると。
「謙遜しなくても、」
「それ以上、言わないでっ!」
そう遮られて不服そうな顔の修平を尻目に、この話を無理やり終わらせることにした。至るところに“真帆バカ”の爪痕を残して……。