エリートなあなたとの密約


「真帆さん、今後も色々と大変だと思いますが、修お兄ちゃんをよろしくお願いします。
私も真帆さんみたいに彗星さんを支えていきたいので、……これからも助けて下さい」

「とんでもない。こちらこそ、夫婦でお世話になります」

まるでお辞儀の見本のような所作で頭を下げられ、こちらも平身低頭で返す。

「料理教室のこと、まーくんが戻って来たら“おねだり”しますね」

これまで修平が口にしなかった怜葉ちゃんの過去は、たくさんの柵や重責に満ちていたのだろう。

それを乗り越えた彼女の表情を見ていると、どことなく彼に通ずるものがあるかもしれない……。


その後、まーくんが淹れて頂いた絶品のティータイムを楽しんだあと、怜葉ちゃんとふたりで万朶の間へ戻った。

こうして運転士さんの待つ彼らとは駐車場までご一緒し、そのまま笑顔で別れた。

彼らを乗せたメルセデスのテールランプを見送った私たちも、レクサスのキーを解錠して車内へと乗り込んだ。

けれど、いつもと乗り込む席は違う。お酒を飲んだ彼は助手席で、私が運転席に座っていた。

私専用に設定されたシート位置に変更し、バックとサイドのミラーをそれぞれ一瞥する。

ようやくエンジンをオンにすると、ハイブリッド特有の静けさでヘッドランプが点灯し始めた。

ひとつ、頷いた私はグッとステアリングを握る。その瞬間、隣から声をかけられたので視線を移す。

「……大丈夫?」

「大丈夫!……多分ね」

大きく頷いた私に鬼気迫るものがあったのだろうか。修平のほうが顔を強ばらせていた。


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