エリートなあなたとの密約


「うん、信頼してる。大丈夫、だよな?」

「どうして語尾が疑問符なの?」

まるで自身を納得させるような口振りの彼に、ジト目を送る私。それに困ったように笑う彼の気持ちも分かるけれどね……。


こうして運転席に座った私は、学生時代に瑞穂と合宿免許で取得したAM限定の免許証を所持している。

問題なのはその後で。日頃から公共交通機関を利用し、車にも乗せて貰うばかりの私は自ずとペーパードライバーになっていたのだ。

ちなみに瑞穂のほうもあまり運転することはない。けれど、根本的に違うところが運動神経の良さ。

学生時代の私は並以下……ううん、後ろから数えたほうが早いほどの運動音痴で、基本的にインドア派だった。

また、瑞穂は彼氏の車やレンタカーを運転する時にもすぐ馴染める。対して私は、ターンランプの位置が違うだけで大慌て。

とあれば、同乗者のほうが青ざめることになってしまい、徐々に乗らなくなっていったのだ。


それは修平と付き合い始めてからも変わらず、何より助手席から運転する彼の横顔を見るのが楽しみだった私。

けれど、そんな毎日を一変させたのは、彼がアメリカの本社へ旅立ったこと。

それが人に頼ってこの状況に甘えてばかりいられない、と心を入れ替えるきっかけを与えてくれた。

ゆえに、彼の渡米中にペーパードライバー講習を受けることにしたのだ。

その修了後は間を空けず、実家の母の車を積極的に運転するように心がけた。


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