エリートなあなたとの密約


初めこそ、私の運転下手をよく知る母が心配し、隣に同乗されながらの克服となっていたけれど。

暫くすると運転自体に慣れて来たのか、郊外にある瑞穂のマンションまでひとりで行けるようになれた。

運転センスのなさには、もう目を瞑らせて貰うとして。今では車線変更や縦列駐車だってどうにか出来る。

この変化に驚いているのは、当人以上に周りのほうで。……諦めなくて良かった、と本当に思う。

そうして今日、自らハンドルを握ったのはじつに1ヶ月ぶり。——但し、彼のレクサスを運転するのは初めてのこと。

母の愛車はロンドンで生活していた縁で、UKメーカーのミニのCrossover。ちなみに、空のように鮮やかなブルー色だ。

ミニはとてもよく走る車ながらボディはコンパクトなので、修平が心配するのも無理はない。

代行をお願いしようとしていた彼にすかさず、『私が運転するから良いよ』と手を挙げたのも私。

そこで目を見張った彼に向かって、にっこりと笑いかけたのだ。——「大丈夫よ」と、根拠のない自信を持って。

妙なところで頑固であるのは彼の知るところ。牽制しても無理だ、と結果的に彼が折れて今に至るのだ。


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