禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「どけぇっ!!!」
地を揺らすような怒号が響き、後ずさっていた兵士が大きな音をたてて吹き飛んだ。
「…っ!?」
ミシュラとアンが、黒龍団の兵が振り向いて見たものは、左手から赤黒い血を滴らせ右手で剣を構えた執念の黒い男の姿だった。
邪魔な自軍の兵を鋼鉄のブーツで蹴り飛ばし、ヨークはヅカヅカとアンの方へと向かって来た。
「…調子に乗るな…弱小国が!!」
吼えて、将軍は右腕だけで剣を振り上げた。
「なんだと…!?」
それは、とても負傷しているとは思えない速さだった。
寸出でミシュラとアンが唸りをあげる剣を除ける。
その鬼気迫るヨークの姿を見て、さっきまですくんでいたギルブルクの兵達が途端に覇気を取り戻す。
「将軍を援護しろ!相手は二人だ、全力で掛かれ!」
ミシュラとアンを取り囲むように黒龍団が陣形を組み直す。
アンと背を預け合いながら、ミシュラは兜の下で奥歯を噛みしめた。
ヨークがまだあんなに剣を振れるとは…計算外だった。
魔法が使えなくなったとしても、あれは脅威だ…!